PDF version

3-F-4-1 画像情報システム / 一般口演セッション: 画像情報システム(4)

ヘリカルCTを用いた冠動脈石灰化スコアの有用性に関する検討

○岡田 武夫    北村 明彦    上田 講紀    内藤 義彦    佐藤 眞一    大平 哲也    今野 弘規    嶋本 喬

大阪府立健康科学センター

抄録:

Assessment of usability about coronary artery calcification score by helical computed tomography scan

Takeo Okada    Akihiko Kitamura    Kouki Ueda    Yoshihiko Naito    Shinnichi Sato    Tetsuya Ohira    Hironori Imano    Takashi Shimamoto

Osaka Medical Center for Health Science and Promotion

Abstract: We use the Multi-slice Spiral CT (MSCT) for the assessment of coronary calcification. We studied 104 patients with hypertension or diabetes or hyperlipidemia. For MSCT simultaneous acquisition of four axial slices, ECG-triggered, allowed the entire heart to be covered in one breath-hold of 20 +/- 5 s. 66 patients are confirmed as normal and 38 patients had coronary calcification. For quantification of coronary calcium the Volumetric Calcium Score (VCS) was calculated. There was an excellent correlation between the VCS and the assessment by the doctor. We studied the relationship between coronary calcification and basilar artery calcification by MSCT. And we studied the relationship between coronary calcification and carotid sclerosis by the echography. Our data suggest that MSCT has potential screening and detecting for arterial sclerosis.

Keywords: MSCTcoronarycalcificationscoring


1. はじめに

 近年、電子ビームCT(EBCT)が開発され、冠動脈の石灰化の検出が実用化されるようになった。米国ではEBCTを用いた冠動脈ドックが行われており、冠動脈石灰化は虚血性心疾患の検出や予後判定に有用であるという成績が多く報告されている。冠動脈狭窄に対する各検査法の診断能を検討したメタアナライシスの結果1)では、EBCTによる石灰化スコアはsensitivity 91%、specificity 49%であり、他の検査法(例 運動負荷心電図:sensitivity 68%、specificity 77% 心筋灌流シンチグラフィー:sensitivity 89%、specificity 80%)に比し、sensitivityに優る検査法であることが示されている。すなわち、冠動脈石灰化は、PTCA等のインターベンション適応の優先度の決定や冠動脈硬化判定のための簡易な検査法として有用であると認められている。また、ヘリカルCTとEBCTで冠動脈の石灰化の検出能に大差ないとの報告2)がある。
 わが国では、高価であることや他臓器への適用が少ないなどの理由からEBCTが普及していない。一方、肺がん検診に有効であるなどの理由から、ヘリカルCTがわが国では広く普及している。最近ではヘリカルCTの1回のスキャン時間が高速化され、短時間の息止めと心電図同期を用いて心臓の拍動の影響を除外することが可能である。
 ヘリカルCTを用いた冠動脈石灰化の検出は、比較的容易に短時間で検査が可能であり、X線の被爆という点を除けば、被験者に苦痛を与えることなく施行できる。生活習慣病の予防と治療においては、動脈硬化の進展予防が目的の一つである。冠動脈硬化の一指標である冠動脈石灰化の検出は、動脈硬化の進展の程度の把握と虚血性心疾患の予防への動機づけに有用であると考えられる。したがって、検診の一環として冠動脈石灰化の検出を行うことが有用であると考えられる。

2. 方法

当センターの受診者で、高血圧、高脂血症、糖尿病と診断されたもののうち、希望者を対象とした。撮像にはヘリカルCT(東芝メディカル株式会社製アクイリオン)を用い、心電図同期下に十数秒(心拍数によって異なる)の息止めを行い、撮像した。画像の解析には米国ScImage社製の"NetraMD"を用いた。これは、関心領域を設定してその領域内のCT値が一定以上の領域の容積(石灰化の量)とCT値(石灰化の程度)をもとに石灰化スコア計算して石灰化の指標とするものである。以上の条件で平成13年11月以降実施したうち、平成14年3月までに解析を終わった104名(平均年齢62.4才、男性45名、女性59名)を対象とした。

3. 結果

104名中、66名(63.5%)が肉眼による判定で正常範囲と判定された。また26名(25.0%)が軽度石灰化、7名(6.7%)が中等度石灰化、5名(4.8%)が高度石灰化と判定された。104名のうち石灰化スコアが算出されている75名について、肉眼による石灰化の判定区分ごとの石灰化スコアの分布を図1に示す。
 冠動脈に石灰化を認めない群は男性25例、女性41例で、その平均年齢は男性56.9才、女性63才であった。冠動脈に石灰化を認める群は男性20例、女性18例で、その平均年齢は男性64.8才、女性66.3才であった。
 冠動脈の石灰化と脳底部動脈の石灰化を比較検討すると、冠動脈に明らかな石灰化がみられない66例のうち30例(45.5%)に脳底部動脈の石灰化が認められた。脳底部動脈の石灰化を認めた例の平均年齢は男性64.5才、女性65.8才であり、脳底部動脈の石灰化を認めない例では平均年齢は男性54.5才、女性59.1才であった。
 冠動脈に何らかの石灰化を認めた38例のうち28例(73.7%)で脳底部動脈の石灰化が認められた。また、冠動脈に高度の石灰化を認めた5例では、脳底部動脈で中等度以上の石灰化が認められた。
 104例のうち52例については、CT検査と同日に頸動脈エコーを施行した。頸動脈エコーにおいて正常範囲とされた29例のうち23例(79.3%)で冠動脈の石灰化を認めなかった。頸動脈エコーにおいて動脈硬化所見を有する23例中12例(52.2%)で冠動脈の石灰化を認めた。また、冠動脈石灰化が高度と判定された3例はいずれも頸動脈エコーにおいても動脈硬化を認めている。

4. 考察

図1に示すように、冠動脈石灰化の肉眼による判定と冠動脈石灰化スコアの間には良好な相関関係がある。石灰化スコア1〜100を軽度硬化、101〜400を中等度硬化、401以上を高度硬化と考えれば、肉眼による判定との一致率も高く、妥当な分類といえるのではないかと考えられる。一定以上のCT値を持つ領域の容積を積算して石灰化スコアを出す方式は再現性が高く、ややもすると読影者に左右される定性的な判定より有用であることはいうまでもない。肉眼による判定と相関が高いことは、それだけ説得力に富む指標になりうるといえよう。
 冠動脈に石灰化を認める例は男性にやや多く、男女ともに石灰化を認めない例と比較すると平均年齢が高い傾向にあった。したがって、冠動脈石灰化には加齢の関与があるものと考えられる。
 冠動脈に石灰化を認めない群のうち、脳底部動脈の石灰化を認める群の平均年齢が高い傾向がある。また、冠動脈の石灰化を認めた群では70%以上の例で脳底部動脈の石灰化を認めている。したがって、加齢の影響を考慮に入れれば、冠動脈の石灰化により脳底部動脈の石灰化を推定できる可能性がある。
 頸部エコーとの関連では、冠動脈石灰化を認める群で頸部エコーで動脈硬化所見を有するものが多く、冠動脈石灰化を認めない群では頸部エコー動脈硬化所見を有するものが少ない。頸部エコーでは良好な画像が得難い症例でも、CTでは確実に石灰化を検出できる。したがって、どのような症例でも、ある程度は頸動脈エコーの結果を推測できる可能性がある。
 ところで、動脈の石灰化の存在は、必ずしもその部位での有意狭窄の存在を意味しない。したがって、血管造影との比較は欠かせない。現在、冠動脈造影所見と冠動脈石灰化の関連について検討を進めているところである。

5. 結語

 ヘリカルCTで冠動脈の石灰化の検出を行った。CT値より算出される石灰化スコアは冠動脈の石灰化のよい指標であると考えられた。このようにして検出された石灰化の程度は、年齢や性別といった因子を考慮に入れることで、他の部位の動脈硬化の進展を推測する指標としても使用可能であることが示唆された。

参考文献

[1] Kennedy J, et al. Coronary Calcium and standard risk factors in symptomatic patients referred for coronary angiography. Am Heart J 135:696-702,1998

[2] Knez A, et al. Determination of coronary calcium with multi-slice spiral computed tomography: a comparative study with electron-beam CT. Int J Cardiovasc Imaging 18(4):295-303, 2002.

図1 冠動脈石灰化判定と冠動脈石灰化スコアの関係